ウソツキハート



それはもう、『命令』ではなく、『お願い』で。



ゆっくり顔を上げて、あらたの目を見つめた。



不思議と深い、あらたの目。



あたしの全てを見透かしてしまうような、全てを包んでくれるような。



「あんず…」



囁かれた声色はひどく優しい。



あたしの手を強く握ったあらた。



そのまま固く、指を絡ませた。



もう、どの指が自分の指かもわからないほどに、一体となったあたしとあらたの指。



とてつもない嬉しさがこみ上げる。



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