ウソツキハート



ぼうっとただ、ひとつになった指先を見つめた。



そんな指先を、強い力でふいに引いたあらた。



「…あらた…。」



「騒がしくなってきたから、逃げんぞ。」



耳元の囁きは、懐かしさと嬉しさをあたしに与える。



いつかのように、あたしの手を引いて、狭い会場を走り出した、あらた。



薄暗い照明、両端には騒ぐ女の子たち。



そんなことはお構いなしに、繋がれて強い力で引かれる手のひらが嬉しい。



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