ウソツキハート



「藤城さんっ…!勝手に居なくなられたら困ります…っ!!」



そんな声に、2人で振り向けば、必死の形相で追ってくる男の人が見えた。



「やっべー、あんず止まるな!走れ!!」



そんな風に言われなくても、あたしはもう、あらたから離れない。



離れてなんて、あげない。



あたしの手を引いて、走る背中。



久しぶりの香りだと思うのは、ここに確かに存在するあらたから香る、香水だから。



ベッドや枕、洋服、首筋。



あらたが居ない間、あたしが毎日つけ続けた香り。



でもやっぱりほら。



あらたが居ないと完成しない、香り。



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