ウソツキハート



「…あんず。」



繰り返された、あたしの名前。



あらたの頬に止まる、夕焼けのオレンジ。



髪の毛の先や、鼻の頭や目の中にも透けている。



あたしはその、暖かみのあるオレンジから目が離せない。



黙ってあらたを見つめれば、その目の中に映るあたしもオレンジに染まっていて。



その光景を、あたしはずっとずっと覚えていたい。



いつか消えてしまうとしても。



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