一途なハイスペック御曹司はお姫さまに夢中。
これ以上居座っても惨めな気持ちになるだけだから、さっさと帰ろう。
彼からもらったペアリングとシンプルなネックレスを外し、テーブルの上に置いた。
「……これ、返すね」
「あ、うん」
私はすかさず椅子から立ち上がると、2千円を置いてマサくんに向かって淡々と告げる。
「さようなら、田中さん」
わざと名前ではなく苗字で呼んだ後、後ろを振り向かずにその場を去る。
帰り道に大量のお酒を買い込み、アパートに帰ってヤケ酒しながら大号泣した。
「ううっ……!大好きだったのにっ…………!!」
ファミレスにいた時は我慢できたけど、家に帰ってきたら涙がとめどなく溢れだしてくるよ。
今までの5年間はなんだったんだろう。
これから、何を頼りに頑張ればいいのかわかんない。
忠告してくれた友達には、絶対話を聞いてもらうんだ。
その日の夜は、自分の部屋で翌日の朝方までひたすら飲んで泣き明かした。