政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】

「無理にするのは違うっていうのもわかってる。日和は初めてなわけだし好きな相手でもないのに抱かれるなんて嫌なのもわかってる。だから、週末一緒に寝る約束、やめよう」
「え…。待って、私は楓君と、」
「仲良くなりたいって思ってくれてるんだろ?俺も同じ。だけど、これ以上日和のこと抱きしめながら一緒に寝たりしたら制御できない」
「…」
「一時の感情に流されて、身を任せて…すべてを失いたくない」

 楓君は我慢している、ということだ。それはつまり、セックスをしたいということで…夫婦ならば当たり前のことだった。舞衣子だって同じようにして子供を授かった。

当たり前のことなのに、心がお互い通じ合っていないセックスをするのは怖かった。
そんな経験も知識もない私が彼にすべてをさらけ出すなど考えたこともない。

「楓君、私は…あなたと距離を縮めたいって思ってる」
「それは俺もだって。だから…―」

 私は彼に手を伸ばした。ちょうど腕が伸ばせるほどの距離を保っているのも彼が“我慢”しているからだ。
どうしたらいいのだろう。夫婦として妻として、私は…―。
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