政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】

「し、しよう…セックス」
「は…?」
「い、今は本当にごめん。心の準備が出来てないの。でも、しよう…その、それまでにいろいろ…準備?しておく…から」

 何を用意すればいいのかとか、どういう順番でするのかとか、わからないから事前に調べたい。

 本当は両思いでのセックスがよかった。

でも、そもそも私たちは政略結婚だ。西園寺家に嫁いだ身として両想いでの“初めて”がいいとかそれは私の我儘のように思えた。彼に我慢をさせたくない。男は好きじゃなくても女を抱けると舞衣子が言っていた。それこそ、清川さんに誘惑されて浮気をされても困る。

 楓君は無言で固まっていた。私が言い終わり、数秒間彼は何も喋らなかった。

「それは、誰のため?」
「え?」
「それは、誰のために?俺のため?」
「違う!私のためだよ…」

半分嘘だった。清川さんに奪われたくないという身勝手な感情もあるし、彼のためにという思いもある。

でも、もう彼は十分に私のために我慢してくれた。

 思い返すと楓君は感情表現が苦手なのに私のことを考えてくれる言動が多い。今回も無理に抱けたはずなのにやめた。やめてくれた。

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