政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
♢♢♢

 朝目覚めると既に楓君は隣にはいなかった。慌てて起きると隣の部屋でコーヒーを飲んでいたようで、私に気が付くと「おはよう」と言って笑ってくれた。
 普段よりも爽やかに感じたのは気のせいではないと思う。

「ごめん、寝坊しちゃって」
「いいよ。それよりもまだゆっくりしていていい。俺は少し早めに出て会社寄ってから帰宅するから」

 彼はまだやることがあるようだ。ほんの少しの寂しさを滲ませながらも私はわかったと彼の目を見据える。

「じゃあ、行ってくる」
「うん、いってらっしゃい」

 ひらひらと手を振って彼を見送ると家事もないため優雅に午前中を過ごした。
チェックアウトの手続きはしなくていいと彼に言われたから既にしてくれているのだろうか?


 11時過ぎに私はホテルを出た。

ホテルのエントランスでタクシーを待っていると背後から声を掛けられた。

「おはようございます。昨日はお疲れ様でした、昨夜はよく眠れましたか?」
「あ、おはようございます。はい、それなりに…」
「それはよかった」

 
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