政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
「それよりも、これ。美味しいのよここのケーキ。二人で後で食べて」
「いいんですか?ありがとうございます!」
すぐにお土産をくれるお義母さんは頗る機嫌がいいようだ。元から明るく社交的で楓君とは真逆のタイプだ。コーヒーを入れてテーブルに四つ、コーヒーカップを並べる。どれも家にあるコーヒーカップの中で一番値段のするものだ。
他愛のない会話をしていると、それで、とお義母さんが姿勢を正すように背を伸ばした。
「今日はちょっと二人に訊きたいことがあったの」
「え?」
「子どものことなんだけど」
「子供…」
予想していなかった話の流れに胸の奥がずっしりと重くなった。
舞衣子の言っていた通り、やはり避けては通れない話なのだと悟った。
「二人はどう思ってるの?デリケートな問題なのはわかってるんだけど、西園寺家の一人息子だから。もしも二人が子供を望んでいるのに出来ないとかいろいろあるならいい病院を紹介する」
「あの、…」
「はぁ、母さん。そういう話をしに来たのなら帰ってくれないかな」
と、楓君が先ほどまで纏っていた雰囲気を変えてそう言った。一気にぴりついた空気になった。