政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
「だって、これは重要な問題よ。西園寺家にとっても、あなたにとっても」
「だから、俺らはまだそういうのは考えてない。二人の問題だから」
「確かにこれは二人の問題だな。でも、西園寺家の一人息子として日和さんとしっかり話し合うべきだ」
「…あの!大丈夫です。その件は楓君とちゃんと話し合います」
「日和さん、良かったわ。もしかして子供が欲しくないとかそういうことなのかと思っていたの。何か力になれることがあれば言ってね。なんでもするから」
「はい…」
無理に強張った頬を上げて笑顔を作った。
いずれ話し合わなければならないことで、いずれ訪れる問題だ。
そもそも楓君のご両親に“セックスもまだです”なんて言えるわけないし、結婚してまだそれすらないなんて思ってもいないだろう。
お義父さんとお義母さんが帰った後、気まずい雰囲気の中、私はキッチンに立って先ほど使用したコーヒーカップなどを洗っていた。食洗器不可の食器だった。
ジャーっと蛇口から勢いよく流れる水が腕に飛びはねる。子供というワードが頭の中から離れない。楓君は子供はいらないのだろうか。ほしいのだろうか。
「日和」
「わっ…」
突如背後から抱きしめられて私は持っていたコップを落としそうになった。
「楓君どうしたの?」
「気にしないでいいから。子供とか考えてないし、ていうかそういう行為もしてないし」
「…うん」