政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
「楓君…子供好きだった?すごく意外だなって」
「好きだよ。ただ一番は日和との子供が欲しい」
「…そっか」

 どういう反応をしていいのかわからなくなって視線を下げた。
いずれ話し合いたいと思っていた話を先延ばしにしていたからずっとモヤモヤしていたが、ようやく溜飲が下がった。

 安堵した顔を上げれば再度、彼と視線が絡む。

「今日は早く寝よう。明後日沖縄旅行だし」
「うん、そうだね」
「楽しみにしてる」

 楓君のその言葉は本音だと思った。表情を柔らかくして私の頭を撫でる彼に胸の奥がキュンと疼いたのは内緒だ。
そして、いよいよ旅行当日となった。

♢♢♢

「大丈夫?眠そうだけど」
「…全然問題ないよ!ちょっと昨日、眠るのが遅くて」
「移動中も寝てていいし、到着しても具合悪かったらホテルで寝ていいから」
「ありがとう。でも大丈夫!」

 羽田空港に到着し雑踏を掻き分けるようにして楓君の隣を歩きながら笑みを溢す。
今日は金曜日で平日だが、有休をとりやすい曜日ということもありそれなりに混みあっている。
 顔色が優れないのは体調が悪いのではなくただの寝不足だ。
ワクワクして眠れなかったということもあるが、舞衣子がくれた本を読んでいたら眠ることが出来なくなってしまったのだ。
(…あれは刺激が強すぎるよ…)
楓君にはもちろん内緒だが、しっかり“準備”はした。




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