政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
全部というワードに今夜行われるであろうそれを想像してしまった。
普段はあまり選ばないような下着も持ってきたし、ローションの準備もしてある。

　どういう流れでセックスをするのかはわからないが、ネットで調べるとそういうのは合図があるんだとか。それを私がキャッチしてそういう流れにすれば大丈夫…なはず。

　空港から降り立つと既に空気が違う。同じ日本国内なのに四季や方言など違いがあることを改めて感じるから旅行は好きだ。その土地それぞれの良さを直に実感できる。

「先にホテルに行ってチェックインしよう」
「わかった」

私たちはタクシーに乗って空港からそう離れていないホテルに向かった。

「いい天気で良かったね」
「そうだな。お腹空いてない？」
「確かに…」
「じゃあチェックインした後すぐにどこかで昼食にしよう。昼食にしては時間が遅いけど」
「そうだね」

　タクシーで目的地に到着する。
目の前に海が広がるホテルは高級リゾートホテルとして沖縄では有名だ。
そして私はこの近くで楓君と出会った。
幼いころの記憶を引っ張り出してくるように脳裏に彼との出会いを思い浮かべる。
自然に目を細めていた。

「どうした？」
「ううん、何でもない」

　あの日、手を引いてくれたことを楓君は覚えていないだろうが私はしっかり覚えている。初恋の相手と結婚できるなんて私は幸せ者だ。

< 142 / 231 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop