政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】

ジャグジーバスは全面ガラス張りで自宅の浴室とよく似た作りだった。
洗面台も二つあり、開放的なバスルームは高級ホテルと謳っているだけある。
景色を見ながらお風呂に浸かり一日観光した疲れを癒す。何度か零れる息は負の感情から出ているのではない。

全身を普段よりも丁寧に洗い、30分以上湯船に浸かっているとそのうちクラクラとしてきて自分がのぼせていることに気が付いた。
急いでジャグジーバスから出て体をふかふかのバスタオルで拭くと今日のために持ってきた下着を着ける。
ただそれを着用しただけなのに、自分が急激にいやらしくなったように感じる。

面積の少ない下着の上からスリップを着る。
ワンピースを着やすくしたり体のラインを綺麗に見せるように日常的に使用している人も多いはずのそれを私は持っていなかったということもありやはり卑猥に感じた。
ネイビーの下着の上からバスローブを羽織って浴室から出ると楓君はワインを飲みながら外の景色を見ていた。

「お風呂先にありがとう。楓君も入るよね?」
「うん。それより日和、なんか顔赤いけど上せた?」
「あっ…うん、そうかもしれない。ちょっと水飲むね」

冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出してなるべく彼の顔を見ないようにソファの上に座る。上質な革の感触を先ほどよりもしっかりと感じながらミネラルウォーターをコップに注いで飲む。ひんやりと冷たい水は火照った体を徐々に冷ましていく。
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