政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
大きな窓から夜空を眺めてくつろいでいる彼とは正反対に私はというと先ほどから何度も冷蔵庫を開けたり閉めたり立ち上がってはストレッチをしたりおかしな行動をしているからか楓君が心配そうに訊く。
「何かあった?体調悪い?」
「全然!!めちゃくちゃ元気だよ」
「元気ならいいけど…さっきから変だけど」
「…全く!!そんなことないよ!」
いつするのか先ほどから頭の中はセックスのことでいっぱいというよりもセックスのことしか考えていない。
合図を探すようにゆらゆらと黒目を動かすものの一向にその“合図”が見当たらない。
今日はするつもりはないのだろうか。明日も宿泊するからよく考えると今日絶対にしなければいけないわけではない。
せっかく舞衣子がプレゼントしてくれた下着を今日着用してしまったことを後悔した。胸元に装飾のあるネイビーのランジェリーも寝る直前に脱いだ方がいいのかな。
「そろそろ寝ようか」
彼の発言に素直に頷いたのは既にセックスをする気がないのだと悟ったからだ。客室に到着してから終始緊張していた私はようやく緊張が解けたように口元に緩やかな笑みを浮かべてうん、と答えた。