政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
「私…ちゃんと用意してきたから!」
「用意?」
「うん…ローションを…」
私の顔を覗き込む彼はキョトンとした表情からすぐに噴き出すように笑った。ローションは準備の中には入らなかったのかそれともそもそもローションはこの場では”違う”のだろうか。
沸騰したやかんのように全身から蒸気が出ていないか心配になるほど総身が熱い。
羞恥心を煽るように彼は言った。
「持ってきたの?」
「だ、だって…」
「ローションか…日和が用意するとは思わなくて驚いた。でも例えば日和が緊張して出来なかったら無理にするつもりはなかった。したいって言ってくれただけで嬉しい」
「…うん」
一瞬で甘美な雰囲気が消え去ったかと思いきや、すぐにまたそれが私たちを包み込む。
照明はまだ消えていない。
いつそれを消そうとかいつ下着を脱ごうとか物凄いスピードで脳内を駆け巡る予習内容が勢いよく塞がれた唇のせいで真っ白になった。
「…っ…んんっ…」