政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】

 彼の顔が首元に埋まるとざらつく舌が首筋を這う。
片方の手がブラの上から胸を揉み、初めての感覚に総身を震わせた。

「…ひゃっ―ぁ、…っあっ…」

 彼の手が背中に回るとブラのホックが外された。下唇を噛んできつく目を閉じた。
彼の舌が胸の頂点を捉えると感じたこともないような快楽の波に飲み込まれる。
 シーツを握る力が強まり、重点的に攻める愛撫にシーツを掻きむしる。
快楽から逃れたいわけではない、なのにどうしても我慢できない。彼の手がそのまま下に移動して慣れたように下着を脱がせる。
肋骨からおへその辺りを通過し、下着にかかる指に声が大きくなる。

彼の唇は私の全身を愛撫するかのように丁寧にそしてじっくりと動く。
胸から腹部にかけて移動する頃には指一本動かせないほど強い刺激にいやらしい声を出すしか出来なくなっていた。

激しくなる愛撫にひたすらに耐えて、ようやくその時が来た。
いったい今何時だろう、とどうでもよいことが漠然と脳内に浮かぶ。

薄っすら瞼を開けて時計を確認しようと焦点を合わせようとするが目の前に彼の顔があった。
いつ見ても綺麗で、まるで漫画に出てくるような王子様のような容姿だと思った。

「ゆっくりするつもりだけど、最初は痛いと思う」
「…うん」

掠れた声を出すと彼は優しく私の手を握ってくれた。
顔を近づけられてキスをすると…―。

「んんっ!」

身を引き裂かれるような痛みが襲った。
全身が粟立つのを感じ、背中を仰け反らせると楓君の声が聞こえるが何と言っているのか聞こえない。彼もまた、どうしてか苦しそうな声を出していた。
彼の首に腕を回して必死にしがみついた。
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