政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
マフラーに顔を埋めるようにして身を縮めた。店内が暖かかったから余計に外気が冷たく感じる。
「松堂君、あれ…そういえば、」
隣に立つ彼を見上げる。どうしたらこんな完璧な遺伝子が生まれるのだろうと疑問に思うほど整った顔が私を見下ろしていた。
「うん。せっかく楽しい話してるのに、空気壊したくなくて言わなかったんだけど、俺前に言ったよね。見合い話断ったって」
「あぁ、うん…」
「何で断ったのか、それは好きな子がいるからなんだけどそれは…―」
突然腕を軽く掴まれたと思ったらそのまま私を引き寄せ、気づくと松堂君の胸の中にいた。
いったい自分は何をされているのだろうと抵抗することもせずに瞬きを繰り返した。
「え…ま、松堂君?」
街中で幼馴染に抱きしめられている状況をようやく理解した。私はすぐに彼から体を離した。
無理に抱きしめられていたわけはないからすぐに離れることは出来たがパニックになっていた。
「…松堂君」
「それは、日和のことがずっと好きだったから」
「…っ」
「日和のことは何でもわかっているつもりだったし今でもそう思ってる。だからこそ、結婚するって聞いた時ショックだった。でももう籍も入れてるわけだからこの気持ちも封印するつもりだった」