政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
しかし夫婦はそう簡単に夫婦にはなれない。それを思い知らされる。
日和の頬を撫でると更に涙が頬を濡らす。すっと顔を近づけキスをした。

抵抗はなかった。泣かせたくないのに、いつも俺のせいで泣かせているような気がする。柔らかい唇をなぞるようにして舌を這わせゆっくり口内に侵入すると甘い声が漏れる。

 日和の優しい香りがして、触れるだけのキスが加速した。
苦しそうに歪める顔もそれを煽る。

「…っふ…ぅ、ん」

 呼吸ができるように顔を離すと日和が掠れた声で何かを伝えてくる。
聞き返すと肩で息をしながら再度口を開いた。

「抱いて、ほしい」
「…え?」
「抱いてほしいの。子供とか関係なく…抱いて」

震える声で確かに発せられたそれのせいで抑えていた感情の堤防は簡単に決壊する。
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