政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
入れ立てのコーヒーと、ケーキを用意して舞衣子の隣に腰を下ろす。
「旦那さん今日は仕事だよね」
「うん、平日だもん」
「見たかったのになぁ。ていうかさ、松堂さん?あの人とはどうなの?」
「どうって…何もないけど。だってただの友達?だし」
「そう思ってるのは日和だけじゃない?」
「え…」
「彼って、王子様って感じよね。日和って小さいころ“王子様が好き”って謎の発言してたからさ」
「してたっけ?!松堂君が王子様っていうのはわかるけど」
「言ってたよ!小さいころにさ、何かの映画か本を読んだのか知らないけど“王子様が迎えに来てくれないかな”ってメルヘンチックな発言していた」
「やめてよ…恥ずかしい」
昔話に花を咲かせていると、リビングのドアが開いた。
え、っと二人して声を上げてドアの方を見る。そこには楓君がいた。
「か、楓君?!」
「ええ…旦那さん?」
「ただいま、今日は早く帰ってきた」
「…早くってまだ14時だよ?!」
「早く帰れる日は早く帰ってこようと思って」
「…そっか」
隣にいる舞衣子は目を丸くして「レベル高…」と小声でつぶやく。
「初めまして」
「あ、初めまして!」
舞衣子と楓君は初対面だ。楓君は素っ気ない態度で自分の部屋に行く。
バタン、とドアが閉まると同時に舞衣子が息を吐く。
「めちゃくちゃイケメンじゃない!」
「そうだよね。楓君は確かにそうだと思う…」
「へぇ、羨ましい!」
目を輝かせる舞衣子に私は複雑な顔をした。政略結婚でなければ、そもそも一緒に住むこともなかったのだから感謝しているけどそのせいで私は永遠の片思いをしなければいけないのかと思うと深いため息が自然と漏れる。