政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
小学生のころ、夏休みになると実家の経営している沖縄のリゾートホテルに一か月ほど遊びに行くのが習慣だった。
その時に出会ったのが日和だった。
迷子になったという少女は目を真っ赤にしながら、親とはぐれたと説明した。
『お父さんとお母さんが…っ、いなくなったっ…ううう、』
『泣くなよ。迷子だろ。すぐに見つかるよ』
『ずっと探しているのに…っ!いないもん』
『俺が探すから』
『本当に?』
『本当』
迷子になった少女は、『名前は、よしなが、ひよりだよ』そう言った。
あの時のことを忘れられていない俺は相当頭のおかしい男なのかもしれない。
ずっとあの時のことが胸の奥にあった。
彼女との再会は大学生の時だった。
再会と言っても、たまたま駅で会っただけだし声を掛けたわけではない。
でも、すぐにわかった。あの子だ、と。
よしながひより
彼女の実家のことを調べるとすぐに老舗旅館の名前が出てきた。
どうせ、俺は将来政略結婚をすることになるのだから…―。
だったら、”あの子”でもいいじゃないか。そう思った。