政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
薄い水色のパジャマのボタンがずれていることに今気が付くが、日和はそんなことを気にする余裕もないほどに混乱しているようだ。

「ど、どうして??!」
「だから、昨日夜中に俺の部屋に入ってきたんだって」
「私が?」
「そうだよ。俺が無理やり連れてきたわけじゃない」
「…ごめんね、全く覚えてなくて、それで…私たち、」
「あぁ、何もないし、してないから安心しろよ」
「そっか」

 ほっとした顔をする日和を見ると、我慢したことが正解だという証明になるが同時に辛くなる。
触れたいのも、近づきたいのも俺だけだ。

「あれ?楓君、目の下のクマが…昨日寝た?」
「寝たよ」

 一睡もしていない、など口が裂けても言えるわけなどない。絶対にそれは言えない。日和が心配そうに俺の顔を覗き込む。スッピンだと余計に幼く見える彼女を再度抱きしめたくなる。
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