政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
♢♢♢

 パーティー前日、淡いピンク色のドレスを前にソワソワしていた。
マーメイド型のドレスは上品かつ女性らしさも感じるデザインで何度も試着をして購入したものだった。

「緊張してる?」
「全然!」
「メイクは?本当にこっちで用意しなくていいの?」
「うん、舞衣子がね、知り合いに有名なメイクアップアーティストさんがいるらしくて。明日はその人にしてもらうことになったの。楓君は少し早めに行くんだよね」
「うん、でも会場に着いたら連絡して。迎えに行く」

そろそろ寝る時間なのに今から緊張している私を見て楓君がクスリと笑った。

「今日は一緒に寝る日ですよ」
「あ、そうだったね。今行くね」
「じゃあ、待ってる」

 私は自分の部屋から出ると先に彼の寝室に向かった楓君を追うようにして自分の部屋を出た。
週末は一緒に寝ようということになっているけど、まだ習慣と言えるほど慣れてはいない。
明日はパーティで、今日は一緒に楓君と寝る。どちらも緊張する。

 明日も楓君と寝る予定だけど(土曜なので)、ホテルに宿泊するから別々のベッドで寝ることになるのかな。
 私は楓君の部屋のドアに手をかけた。

「失礼します…」

顔を出してそっと中に入る。

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