政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
いつかこのような状況にも慣れる日が来るのかもしれないけれど、今の時点でその兆候は全くない。
 楓君はいつも余裕そうだ。私とは真逆でいつか彼の余裕のないところを見たいがそれは一生こないような気がする。

経験値も違うのだから。
オドオドしながら彼のベッドの前に立ち、楓くんが「早く入りなよ」と急かすので頷きながらベッドの中に体を預ける。

「日和はまだ緊張してんの?」
「そりゃ…まぁ」

 二人で天井を見ながら会話をする。私はこの時間は好きだった。
緊張感は抜けないものの、こうやって夫婦として寝る前に会話をすると距離が縮まった気がするから。

「俺の最近の楽しみはこの時間かな」
「…え、そうなの?」
「そうだよ。まぁ、深いキスは出来ないけど」
「…私もこの時間好き」
 深いキスは出来ない、といった楓君に心の中で首を傾げながらも確かに頬にキスならばあるがあの夜のようなキスはあれ以来ない。
理由を訊きたい衝動に駆られるが、やめた。

「明日は無理しなくていいから」
「しないよ!私が行きたかったんだもん」
「それならいいけど」

目を閉じると同時に眠気が襲ってきた。
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