政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
♢♢♢

 パーティ当日
楓君は早くに家を出ていた。
 体調が悪かったり、疲れたらすぐに言うように、と何度も言われた。
その発言を訊くと、私がパーティに出席することにあまりいい感情を持っていないような気がする。

 舞衣子も今日はメイク時のみ付き合ってくれるようで、ある程度準備をしてからタクシーを呼んで自宅を出た。
「あ!日和!」

 指定された店の前にちょうど舞衣子が手を振って立っていた。
私は駆け足で彼女に近づく。
舞衣子は普段ならば高いヒールに、露出の高い服装だが今日は違った。低いパンプスに暖かそうなウールのコートを羽織り、パンツを履いていた。
その姿を見てお母さんになるんだ、と親友として嬉しくなった。

「お、そのワンピースね?可愛い」
「そうでしょ?舞衣子も今日はありがとうね」
「いいのいいの!それよりも、早くメイクしてもらおう」

 それなりにお高い店が並ぶビルの前で舞衣子が大きなガラスの扉を開けて案内する。
 どうやらここで今日はメイクをしてもらうらしい。
私はペコペコと頭を下げながら足を進める。

「こんにちは~海原です!今日はお休みだったんだけど、舞衣子ちゃんの頼みってことで」
「はじめまして!西園寺日和です。わざわざありがとうございます!今日はよろしくお願いします」

 店内に入るとすぐに出てきたのは男性だった。
タイトなチノパンにタートルネックセーターを着ている彼は非常に気さくで明るい人だった。また、身に着けているものや服装からもオシャレな人なのだと思った。
 挨拶をするとすぐに鏡の前の椅子に座らされ、すぐにメイクを施す。
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