政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】

この階はスイートルーム専用だそうで、同じ階で普通ならばチェックインの手続きをするようだ。そして専任スタッフによるお出迎えもあるようだ。

　楓君に続くようにしてエレベーターから下りると同時にスタッフが駆けつける。楓君は「案内はいらない」と素っ気なく言うとスタッフが足を止める。

少し冷たいような気もするが、これが普段の彼なのだと思う。
私たちが宿泊するスイートルームの前に清川さんが立っていた。

「お久しぶりです」
「こんにちは。お久しぶりです…えっと今日は、」
「副社長、山川様がお見えになりました」
「わかった。今行く」

　清川さんに軽くスルーされたが、仕方がない。忙しい雰囲気を漂わせている彼女は“仕事”をしているだけだ。のほほんとこの場に来ている私とは違うのだ。場違いな空気を感じながら彼女に会釈をしてから部屋にはいる。

楓君も一緒に中に入ってくるが、彼は今日招待している社長たちへの挨拶などで忙しいだろう。