政略結婚のはずですが、溺愛されています【完結】
スイートルームは想像以上にいい部屋で、75平米以上はある広さに感嘆の声を上げた。都内にあるホテルだが、皇居近くに建てられているから大きな窓からは見える景色は緑も相俟って絶景だ。
 部屋もそれを意識したつくりになっており、どの部屋も景色を堪能できるよう窓が大きい。
寝室をチラッと確認すると、
「え…」
大きなベッドが一つだった。もちろん枕は二つあるし、二人で眠るには何も問題はない。

ただ、どうしても大きなベッドが一つだとソワソワしてしまう。

「どうかした?俺そろそろ行く」
「ううん、何でもない。あと一時間後くらい?」
「そうだな。始まりだけ一緒にいてくれればあとは部屋に戻っていてもいいから」
「大丈夫だよ!最後までいるよ!」

 興奮気味に大きく頷く私に楓君はクスリと笑って私に顔を近づけてきた。
そして、頬に軽くキスを落とす。

「っ…」
「無理はしてほしくないから」

そう言い残すと、彼は背を向けこの部屋を出ていった。
途端に力が抜けてバッグを床に落とした。
「もう…反則だよ」
頬に手を当て、高鳴る胸の鼓動を抑えるように深呼吸をした。

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