がんばれ加藤さん 〜年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません〜
とは言うものの、12月24日という日に、わざわざ急に接待になるなんて……妙に引っかかるものを感じた。

綾香の業務スケジュールを確認してみる。
今日のアポ先の企業名は、聞き覚えがあった。
綾香を何故か気に入り、ことあるごとに飲みに誘ってくる担当者がいると……綾香から聞いたことがある企業だった。

「担当変える」

僕は、何度か綾香に提案をしたが

「でもお客様は私を信頼してくれてるので……」

と、綾香が拒否をしてきた企業。
綾香がその担当者になびくことはないと、分かってはいたのと、実際綾香が担当になってから成果がうなぎのぼりだったから、上司としての判断で様子見することにはしてはいたが……。
よりによって、僕と綾香のクリスマスイブを台無しにしやがって……。
これは少し、締めないといけないか……。


「出る。直帰するから」

僕がカバンを持ちながらそう言うと、周囲が急にざわつきだした。

「え!?」
「ま、まじか〜!?」
「やだー!加藤さーん!」
「きゃー!!!!」

一体さっきから何なんだ……。
本当にこいつらは騒がしい。
もっと仕事に集中しろ。

「加藤さん加藤さん」

河西が耳元でぼそぼそとこう呟いてきた。

「加藤さんが、高井さん大好きなのは周知の事実ですが、流石にクリスマスに相手なしの我々には、色々刺激が強いですので、ちょっと控えていただけると嬉しいです」

さっぱり言っている意味が分からなかったが、これ以上時間を取られるのも嫌だったので

「分かった!分かったから」

と河西を振り切った。
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