がんばれ加藤さん 〜年下上司が、地味な私への溺愛を隠してくれません〜
やっぱり来てよかった。
ちょうど、綾香が、その企業の入り口から出てくるところだった。
そして、例の担当者という男が、綾香にぴったりくっついていた。
今すぐ引き剥がさなくては……!

「高井さん」

僕が走って近づくと、綾香がおばけでも見たような表情になってから

「な、何でこんなところに……!?」

と言った。

「綾香ちゃん、この人知り合い?」

横にいる担当者が、僕の、綾香を、よりにもよって、綾香ちゃん呼びしてした。

「あっええと……その……私の上司……です……」
「え、そうなんだ!?」
「はい……」

それだけじゃないだろ。
それだけじゃ。

「どうも、綾香ちゃんにはいつもお世話になっておりますー。おかげで良い新入社員がたくさん入ってくれて、まじありがたいですー」

この男……口調が生理的に嫌いだ。
しかも、ベタベタ綾香の肩に触りやがって。
ここは……牽制しておくか……。

「どうも。こちらこそ、うちの、高井綾香がお世話になっています」

それから、奴に近づいて

「プライベートでも、僕の綾香なので……節度を守っていただけると、嬉しいんですけどね」

と、耳元で囁いてやった。
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