エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
「駿太郎さん、お帰りなさい」
「ただいま、芽衣子」

駿太郎さんは約束通り、さほど遅くならずに帰宅してきた。私もさっき帰宅したばかり。たった今炊飯器のスイッチを入れたところだ。

「ごめんなさい。ごはん、もう少し待ってくれる?」
「きみだって、帰ってきてそんなに時間は経っていないだろう。急ぐことはないよ」

どこかぶっきらぼうな言い方だけど、私はそんなところも嫌いじゃない。兄の言う通り、駿太郎さんは真面目な人なのだ。女性慣れしていて口が回る男性よりよほど信頼できる。

「洗濯物、乾燥が済んでいるから、俺が畳んでおくよ」

そう言って寝室に着替えに行く後ろ姿を見送る。私が疲れないように、自分から家事の分業を言いだしてくれるのだから、やっぱり思いやりがある。
真面目過ぎると兄は言っていたけれど、兄のようにチャラチャラした男性より、私は駿太郎さんのような堅実で落ち着いた人が好き。そりゃあ、もう少し私に笑顔を見せてほしいとか、不満があったらどんどん口にしてほしいなんて希望はある。でも、なにより一緒にいて安心できるのは、家族として大事なことだと思う。

ふと、彼がダイニングに置きっぱなしにしたスマホの液晶画面が目に映った。ちょうどメッセージが届いたタイミングだったようで、液晶が明るくなりメッセージ相手の名前が表示された。

【宮間万美】

ぎくんと胸が詰まった。女性の名前……ミヤママミと読むのだろうか。
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