エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
「芽衣子、何時に寝る?」

二十三時を回った頃、ダイニングテーブルで仕事をしていた駿太郎さんが尋ねてきた。ソファでテレビを見ていた私はドキドキしながら答える。

「駿太郎さんと同じ時間に寝たいです」

駿太郎さんは頷いて、ノートパソコンを閉じた。私を迎えにソファまで来てくれる。

「おいで」

手を差し出されるので、そっと重ねるとそのまま手を引かれて寝室へ。
結婚式の夜……所謂初夜の後、私の体調があまりよくなかったから、駿太郎さんは私に性的な意味で触れたりはしなかった。一週間、同じベッドで眠りながらも抱き合うことはしなかった私たち。
今夜は二度目の夜になる。私だってそうしてほしいから、同じ時間に寝たいと答えたのだ。

「身体、つらかったら無理しないで」

ベッドに腰かけると、優しいブラウンの瞳で射抜かれた。鼓動が加速する。

「大丈夫。もう、本当に元気なんですよ」

私はにっこり笑って、そっと彼の手を握り返した。

「そういうこと……しても平気です」
「わかった。ありがとう」

駿太郎さんの綺麗な顔が近づいてくるので、私は顔を右に傾け、キスに応じた。
甘い水音を響かせ、キスが深くなっていく。

彼に身を任せ、思う。こうして彼のものになっていけばいい。
このほのかな胸の疼きはきっと恋の始まり。
抱き合って、身体を繋いで、そうして心も通わせていけばいい。私は彼の奥さんで、彼を愛する資格がある人間なのだから。

そうして日々を紡いでいけば、この漠然とした不安はいつか消えてなくなってしまうはずだから。


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