エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
ランチコースを頼み、来るまでに兄のたまった愚痴を聞く。大企業の社長令嬢の凛さんは、兄のふたつ下。天真爛漫な女性で、兄は振り回されているらしい。
「お嬢さんなんだよな、思考が。俺は父親に厳しく育てられた身だから、彼女にはたまについていけないよ」
兄はセットのサラダとアンティパストをもぐもぐ咀嚼しながら言う。
私も会ったことがあるけれど、凛さんは素直で可愛らしい女性だった。確かにお嬢さん然としたところはあるとしても、それは彼女の良さなのではないだろうか。
「兄さんが彼女の前で本性を見せていないのが問題だと思うけど。結婚したら、いつだっていいところばかり見せていられないでしょう。その意地悪で偉そうな顔も、早い段階で知ってもらうべきじゃない?」
「おまえ、俺のことをそんなふうに見ていたのかよ」
兄は顔をしかめ、文句を言う。
無自覚って怖い。兄は未来の政治家で、子どもの頃から父に鍛え上げられたせいか人当たりがよく魅力的な男性だ。
だけど、その外面の良さは二重人格レベルで、中身はてんで子ども。主張は俺様だし、四つも下の妹に常にマウントを取らなきゃ気が済まない人なんだもの。
「まあ、俺のおかげで芽衣子はいい男と幸せな結婚できたんだものな。余裕があるよな、結婚生活の先輩は」
マウント付きの嫌味を言ってくる。私は「はいはい」と受け流し、ひと言皮肉でもと考え、つい黙り込んでしまった。
“いい男と幸せな結婚”。
そうよ、私は幸せな結婚をした。駿太郎さんという最高の男性と。
「お嬢さんなんだよな、思考が。俺は父親に厳しく育てられた身だから、彼女にはたまについていけないよ」
兄はセットのサラダとアンティパストをもぐもぐ咀嚼しながら言う。
私も会ったことがあるけれど、凛さんは素直で可愛らしい女性だった。確かにお嬢さん然としたところはあるとしても、それは彼女の良さなのではないだろうか。
「兄さんが彼女の前で本性を見せていないのが問題だと思うけど。結婚したら、いつだっていいところばかり見せていられないでしょう。その意地悪で偉そうな顔も、早い段階で知ってもらうべきじゃない?」
「おまえ、俺のことをそんなふうに見ていたのかよ」
兄は顔をしかめ、文句を言う。
無自覚って怖い。兄は未来の政治家で、子どもの頃から父に鍛え上げられたせいか人当たりがよく魅力的な男性だ。
だけど、その外面の良さは二重人格レベルで、中身はてんで子ども。主張は俺様だし、四つも下の妹に常にマウントを取らなきゃ気が済まない人なんだもの。
「まあ、俺のおかげで芽衣子はいい男と幸せな結婚できたんだものな。余裕があるよな、結婚生活の先輩は」
マウント付きの嫌味を言ってくる。私は「はいはい」と受け流し、ひと言皮肉でもと考え、つい黙り込んでしまった。
“いい男と幸せな結婚”。
そうよ、私は幸せな結婚をした。駿太郎さんという最高の男性と。