エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
「ん? どうした?」
兄が私の顔を覗き込んでくる。メインのカツレツがやってくるので一度背筋を伸ばして、それから笑った。
「なんでもないわ」
「……芽衣子、もしかしてまだ日永の昔の女を気にしてるのか?」
私は兄をぎろっと睨んだ。本当は過剰な反応をしたくなかった。だけど、あまりに無神経だと思ったのだ。
「昔の女なんて、不確定なこと言わないで。兄さんだって、駿太郎さんから直接聞いたわけじゃないんでしょ」
「ああ、あいつは誰にも恋人の話はしてないんじゃないか? だけど、当時学部の何人もが見てる。あいつが年上の美人と腕を組んで歩いているところを」
ぐつんと胸の中で軋む音がする。嫌だ、この感覚。この痛み。
宮間万美という名前がちらちらと頭の中を過る。
「日永は学部一のイケメンだったからな。狙ってる女が結構いてさ。でも、みんな一緒にいる美人の姿を見て『敵わない』って諦めてたよ。年上で、会社経営でもしてるのか身なりがよくて、とびきりの美人だった。二十歳そこそこの小娘じゃ敵わなくて当然って感じの」
兄は自分だけが知っている昔話だから、偉そうに長々と語るけれど、現在の妻の私がどんなに嫌な気持ちになっているかはどうでもいいようだ。
兄が私の顔を覗き込んでくる。メインのカツレツがやってくるので一度背筋を伸ばして、それから笑った。
「なんでもないわ」
「……芽衣子、もしかしてまだ日永の昔の女を気にしてるのか?」
私は兄をぎろっと睨んだ。本当は過剰な反応をしたくなかった。だけど、あまりに無神経だと思ったのだ。
「昔の女なんて、不確定なこと言わないで。兄さんだって、駿太郎さんから直接聞いたわけじゃないんでしょ」
「ああ、あいつは誰にも恋人の話はしてないんじゃないか? だけど、当時学部の何人もが見てる。あいつが年上の美人と腕を組んで歩いているところを」
ぐつんと胸の中で軋む音がする。嫌だ、この感覚。この痛み。
宮間万美という名前がちらちらと頭の中を過る。
「日永は学部一のイケメンだったからな。狙ってる女が結構いてさ。でも、みんな一緒にいる美人の姿を見て『敵わない』って諦めてたよ。年上で、会社経営でもしてるのか身なりがよくて、とびきりの美人だった。二十歳そこそこの小娘じゃ敵わなくて当然って感じの」
兄は自分だけが知っている昔話だから、偉そうに長々と語るけれど、現在の妻の私がどんなに嫌な気持ちになっているかはどうでもいいようだ。