エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
「それもあいつが大学時代の話。もう六、七年前だ。今は年下の魅力に目覚めて、おまえの旦那になったんだからいいだろ」
「兄さんって本当に無神経」

私はカツレツをザクザク切りながら言った。

「とっとと凛さんに本性がバレて振られればいいわ」
「縁起でもないこと言うなよ。凛ほど条件のいい嫁さんはいないんだから、俺は上手く立ち回って結婚までこぎつけるよ」

あははと豪快に笑う兄。本当にあっさり振られないかしら、この男。ここのランチが美味しくなかったら、ついてこなかった。そのくらい不快な気分。

食事をしながら思う。
駿太郎さんの過去のこと……ああ、本当に過去のことだったらいいのに。過去の恋人の話だったら、私だって気にしない。
だけど、いまだに女性の名前でメッセージが送られてくると言ったら、兄はどんな顔をするだろう。

もっと言えば、私はその女性と思しき人の顔も知っている。偶然、写真が視界に入ってしまったことがあるのだ。
写真の女性、駿太郎さんの過去の恋人、宮間万美という女性。その三人が同一人物なのかはわからない。だけど……。

いいや、こんなことを考えて心を曇らせてはいけない。
私は幸せなはずだ。夫は私を丁寧に扱ってくれるし、優しく愛してくれる。表情に乏しく、言葉も上手いわけじゃないから、本当のところ私をどう思っているのかもわからないけれど、嫌いだったら結婚しないはずだもの。

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