エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
1.お見合い結婚
「それじゃあ、行ってくるね」

早朝の玄関、私がお見送りをするのは新婚ほやほやの旦那様。

日永駿太郎さん、二十九歳。
すらりと背が高く、脚が長く、ダークスーツが似合う男前。顔は演技派の四十代俳優に似ていると多くの人に言われるけれど、私から見たらその俳優より綺麗で格好いいと思う。特にハーフリムフレームのメガネをかけるお仕事中や読書中がとても素敵。

そんな駿太郎さんは毎日私より一時間ほど早く出勤する。彼のオフィスは霞が関で、私はお隣の国会議事堂前駅が職場の最寄り。どちらもメトロで一本だ。

「今日は、そんなに遅くならないよ」
「良かった。それじゃあ、お夕飯を作っておきますね」
「きみも無理しないで。結婚式から一週間、体調を崩していたんだから」

駿太郎さんはそう言って、私を心配そうに見つめた。
結婚式の後、疲れからか一週間も微熱が続いて寝たり起きたりだった私を優しい言葉で気遣ってくれる。こんなに体調が悪くなるなんて、ハネムーンの予定を入れないでおいてよかったなどと思ったけれど、仕事は一日休んだだけで済み、週が明けたらすっかり回復していた。

「もう大丈夫です。今日から頑張っておうちのことをしますからね!」

元気のアピールに力こぶを作って見せた。筋肉がないのでただの貧弱な腕を晒しただけ。駿太郎さんが少しだけ微笑んでくれるのを狙ってみたのだけれど、どうかな?

すると、予想外にも駿太郎さんが私の額に手を当てる。前髪をかきわけ、こつんと額同士をくっつけた。
心臓がどっくんとすごい音をたて、私は固まってしまう。
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