エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
3.優しい旦那様



「芽衣子、味を見てくれるか?」

おたまで掬ったひとさじを小皿に移し、駿太郎さんが差し出してくる。隣で受け取り、ひと口。
こくんと頷き、私は彼を見あげた。

「うん、すごく美味しい。よくできていると思います」
「ルーを溶かしただけなんだけどな」
「お野菜もお肉も全部駿太郎さんが切って炒めたじゃないですか」

駿太郎さんは照れくさそうに視線をはずしてしまう。シャイな彼は、たまにこうして表情を隠すような素振りをするけれど、そういうときは感情が動いているときのようだ。恥ずかしかったり、嬉しかったりという気持ちを、素直に表現するのが苦手みたい。

今日は駿太郎さんが夕食を作ってくれている。
独身時代ひとり暮らしだった駿太郎さんは、自分でできることも多いけれど、料理だけは外食やお弁当に頼っていたそうだ。私の妊娠をきっかけに料理ができるようになりたいと言いだしたのは彼自身。
メニューはビーフシチューだ。まずは簡単なものにしようとメニューを決め、駿太郎さんと帰りの時間を合わせて買い物をしてきた。
手順通りに手際よく料理をしていく彼は、その勤勉さからもあっという間に料理もマスターしてしまうだろう。

「ごはんももうじき炊ける」
「そうしたら、お夕飯ですね」
「やっぱり付け合わせでお浸しやサラダなんかも作った方がよかったんじゃないかな」

駿太郎さんが窺うような顔をする。今日はビーフシチューをごはんにかけて、一品で完成の予定なのだ。
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