エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
「慣れたらにしましょう。いきなり何種類も用意するのは大変です。あ、手間なくサラダを付けたい時はスーパーのカット野菜のコーナーを見るといいですよ」
「わかったよ。スーパーにも行き慣れていないんだ。芽衣子が行けるときは、また同行して色々教えてくれると助かるよ」
「ふふふ、私も駿太郎さんと結婚が決まって慌ててお料理を勉強したので初心者です」

我が家は母が家事を取り仕切ってくれていたので、私は手伝い程度しかしてこなかった。
父は北関東の地元が選挙区で、円山家の実家もそちらにあるけれど、一年のほとんどを都内で過ごすため、私たち家族は十年ほど前から都心のマンション住まいである。

「一緒にスキルアップしていきましょうね」
「ああ、子どもが産まれたら離乳食も手作りしてみたいな」

前向きなことを言ってくれる駿太郎さんに思わず顔がほころぶ。

「気が早いなあ」

私の妊娠に戸惑った様子だった駿太郎さんは、一緒に病院に行ったことを契機に妊娠出産に意欲的な旦那様に変貌を遂げた。
もしかして、超音波写真を見たのがよかったのかな。実感が湧いてきたのかもしれない。料理ができるようになりたいのは、赤ちゃんが産まれた後、私をサポートするためだもの。

よかった。今は心からそう思える。
赤ちゃんを授かってよかった。私と駿太郎さんを赤ちゃんが繋いでくれる。
駿太郎さんはますます優しく、温かく、そんな彼に愛情を感じる。私はすっかり旦那様に夢中なんだけど、彼はどうだろう。私と子どもと仲良く暮らしていきたいと言ってくれた。
彼の気持ちを信じたい。
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