エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
吸い寄せられるように唇が重なった。まるで引力が働いているみたいだ。キスの瞬間はいつも嬉しい。
触れるだけの軽いキスを終え、ふたりとも恥ずかしくなって慌てて視線を画面に戻した。だけど指と指を絡めて、手は繋いでおく。

「私はいつ、何歳で出会っても、駿太郎さんに恋をすると思います」

駿太郎さんが好意の言葉を口にしないので、私もほとんどを言ったことがない。恋、という単語に、言いながらドキドキした。
駿太郎さんはしばし黙って画面を見ていた。それから、不意に尋ねてきた。

「あ、あの、芽衣子。お腹を触ってもいいかい?」
「え、はい! どうぞ」

手は繋いだまま、反対側の左手を伸ばし駿太郎さんが私のおへそのあたりを服の上から触った。

「まだ全然わからないけど、ここにいるんだね。俺たちの赤ちゃんが」
「ええ、そうです。私も実感ないです」

笑うと背中に腕を回され、抱き寄せられた。お腹を圧迫しないやわらかな抱擁が心地よい。

「芽衣子、好きだよ」

そんなふうにはっきりとした愛の言葉をもらったのは初めてじゃないかしら。感動して涙が込み上げてくる。

幸せ。もう不安なんてゴミ箱に捨ててしまおう。さっさと燃えるゴミで出してしまおう。
駿太郎さんは私を好きでいてくれる。私の気持ちに応えてくれる。
私たちはもっともっといい夫婦になれるに違いない。

「ふふ、映画、ちょっと巻き戻して見ましょうか」
「そうだね」

そっと身体を離した私たちは、照れて笑い合った。

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