エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
「あまり身体が弱いとなると困ってしまうな。妻たるもの夫を立て、家庭を盛り立てていかなければならない。寝込んでばかりでは呆れられてしまうぞ」

本当にデリカシーもなければ、旧時代的だ。
しかし、父なりに心配してはいるようだ。私の顔を覗き込み言う。

「結婚式までバタバタ忙しくして、その後、のんびりハネムーンの時間を取らなかったのがいけないんじゃないか? おまえも駿太郎くんも仕事を優先してしまったけれど、今から改めてハネムーンということでお休みを取るのはどうだ? 駿太郎くんの上司には私が話をつけるから」

余計なことを言わないで!……とはさすがに言えないので、私はにっこり笑う。

「そんなに急にお休みをもらってもどこにも行けません。今は駿太郎さんも年度末で忙しい時期だから、いいんです。落ち着いたら、ふたりで計画しますから、そのときはたくさんお休みをくださいね、円山先生」

父は納得したようで、野間さんと兄を連れて外出していった。事務所には私と墨田さんだけが残る。

「でも、芽衣子さん、本当に顔色があまりよくないですよ。ほらほら、座って」

墨田さんに心配をかけるわけにはいかないので、ごまかして言った。

「貧血で気持ち悪くて、食欲が落ちてるんですよね。また病院に行かなきゃなあ」
「私も若い頃は貧血気味だったからわかりますよ。くらくらするし、吐き気はするし。芽衣子さんはいい奥さんになろうと頑張り過ぎてるんですよ。ご主人に甘えて、なんでもしてもらえばいいんです」

すでに色々してもらって、幸せいっぱいなのだけど、それは今のところは内緒だ。
私の旦那様は、父や兄みたいな『女は一歩下がって男の後ろをついてこい』タイプじゃない。つわりの妻のために愛情たっぷりの料理を作ってくれ、家事をしてくれる人なのだ。
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