エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
さっきみたいな、愛情溢れる気遣いもあった。私がふらついたら抱きとめて椅子に座らせてくれたし、私の職場近くに迎えにきて帰ってくれた。私はそんな優しい彼にずっとドキドキしっぱなしの一週間だった。

本当に、なんて素敵な旦那様だろう。
私たちはきっと時間をかけて仲良くなっていけると思う。
親の薦める相手とのお見合い結婚……この字面だけ見たら、あまり幸せな感じはしないかもしれないけれど、私は駿太郎さんといい夫婦になりたい。

……なにも不安なことはないし、きっときっと幸せになれる。
きっと……ううん、絶対。



新居のマンションから乃木坂駅に出ると千代田線で国会議事堂前駅へ。国会議事堂裏手にある参議院議員会館が私の職場だ。ここは参議院議員の東京における事務所がある場所で、私は父親である参議院議員、円山鉄男(まるやまてつお)の事務所職員をしている。

「おはよう」

室内にはすでに兄である円山鉄二(てつじ)が来ている。兄は父の私設秘書だ。議員秘書には、党からの公設秘書と自身で雇う私設秘書がいる。兄は大学時代から秘書として父に付き従い、いずれは政治家としてその地盤を継ぐ予定だ。

「先生は議事堂?」

職場では一応、父を先生と呼ぶことにしている。ちょうど今は国会の常会会期中だ。議員の日程は日に寄ってかなり違うけれど、午前中は委員会などがあることが多く、朝事務所へ寄らず直接国会議事堂へ行くことも多い。
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