エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
駿太郎さんが出勤していき、私は二時間ほど寝直した。
寝不足も体調不良のひとつだったようで、眠ったら吐き気はだいぶよくなり、洗濯をしたり軽く掃除をしたりという家事もできるようになった。
よかった。具合が悪いときはこれが無限に続くのではないかと心細い気持ちになるけれど、こうしてラクな時間もあれば、多少心にゆとりが生まれる。どうか、これ以上ひどくならずに、つわりの時期を乗り切れますように。

寝室の空気を入れ替え、掃除機をかけた。駿太郎さんの仕事道具が置いてあるデスク周辺も片付ける。すると、デスクと壁の間に何かが挟まっていることに気づいた。
引っ張りだしてみるとそれは手帳だ。駿太郎さんのものであることは間違いないけれど、いつのものだろう。今使っている手帳ではないと思う。

一瞬、手の中のそれを開きたい衝動に駆られる。
駄目、これは個人の持ち物。勝手に見るなんてマナー違反だ。そう思いつつ、スマホに表示された宮間万美の名前が過る。
もしかして何か手がかりが見つかるかも。少しだけ、少しだけなら……。

耐えきれずページを繰った。ぎくりとした。開いたのは手帳の中表紙。手帳本体とカバーの間に写真が数枚挟まれている。

「あの人だ」

思わず呟いていた。そこにいたのは駿太郎さんのスマホで見た女性だ。
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