エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
「ずっと、誤解していて……駿太郎さんに嫌な態度を……」

俺は芽衣子に深々と頭を下げた。

「ごめん。俺の配慮が足りなかった。きみが誤解しても無理ない状況を作ったのは俺だよ。とにかく信じてほしいから、ちょっと待ってくれるかい?」

スマホを手に取り、母に折り返す。母はすぐに出た。

『駿太郎~、やっと繋がったあ。ねえ、聞いてよ~』
「悪い、母さん。突然だけど、俺の奥さんの芽衣子と少し話して」

呑気な声を制して無茶ぶりだと思いつつ、芽衣子にスマホを渡す。案の定わたわたと慌てながらも、スマホを耳に当てる素直な芽衣子。

『あら~、あなたが芽衣子ちゃんね~! ご挨拶が遅れてごめんなさいね~! 駿太郎のママの万美で~す』

母の甲高くてテンションの高い声がこっちにも聞こえてくる。それから、ほんの数分、芽衣子と母は話して、俺がスマホを受け取った。

「母さん、また後でかけなおすよ。ちょっと、奥さんと大事な話をしていて」

そう断って電話を切った。

「驚きました。急にお電話するんだもの」
「ごめん。この方が伝わると思ったんだ。本当にすまなかった。長く誤解させてしまっていた。でも、聞いてほしい」

俺は芽衣子の両手を改めて握り、彼女の大きな目を覗き込んだ。

「見合いで会ったときから、きみに惹かれている。今までもこれからもきみを裏切るようなことは絶対にしない。きみと幸せな家庭を築きたいんだ」
「駿太郎さん、嬉しい……」

ふにゃっと泣きそうに歪む芽衣子の顔をなおも見つめて、俺は覚悟を決めた。
< 62 / 85 >

この作品をシェア

pagetop