エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
5.あなたは最高の旦那様
暑い暑い夏がやってきた。連日猛暑日が続き、今季の最高気温を更新していく。
「芽衣子、お水飲んで」
「ありがとう、駿太郎さん」
私は差し出されたペットボトルを受け取った。たった今、駿太郎さんが自動販売機で買ってくれたものだ。
買い物がてらにお散歩で出かけたのだけれど、アスファルトの照り返しのキツさに公園に逃げ込んだところだった。
「この気温の中、お散歩は少し無謀だったかな」
「でも、一日エアコンの効いた部屋でじっとしているのも、どうも身体に悪そうで。ちょっとは動きたいな」
「やっぱり気温が高過ぎたよ。目的地までは徒歩じゃなくてメトロに変更しよう」
「でも、駅は少し戻るし。このままお散歩でも」
「今日は内祝いの品を選定するから、あちこち歩きまわる。目的地は複合施設だし、広いからちょっとした散歩にはなると思うよ」
駿太郎さんはそういって、私の大きくなったお腹を撫でる。
「きみもそう思うだろ。ママに言ってやって」
妊娠八ヶ月の大きなお腹に向かって話しかけるのだ。不思議なものでお腹の中で赤ちゃんがむくむくっと動く。赤ちゃんを味方につけられてはたまらない。
「はーい、わかりました。メトロに乗ります」
私が答えると、駿太郎さんは満足そうに微笑む。お腹の中でも赤ちゃんが返事なのかぽこんとキックをしてくれた。