エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
二月の結婚式から半年とちょっと。私は妊娠八ヶ月に入っていた。
赤ちゃんは男の子で、十月の終わりには出てくる予定。母子ともに順調に妊娠後期を迎えている。

駿太郎さんとはいっそう絆が深まったように思う。気持ちが通じ合うまでに時間がかかってしまった分、出会ってからの時間を埋めるように駿太郎さんは私を愛してくれる。
私も駿太郎さんには遠慮せずに、素直な気持ちを言うようにしている。駿太郎さんが優しいので、喧嘩になるようなことはないけれど、前よりお互いの心がぐっと近づいたようで嬉しい。

駿太郎さんは私と赤ちゃんを守るためにいつだって真剣だ。
今日も、私の希望で散歩と称して買い物に出たけれど、気温が身体に障るからとルート変更。きっと、この後もこまめに休憩や給水を取るようにするのだろう。本当に優しくて素敵な旦那様。

だけど、駿太郎さんにだって甘えたいときや、弱音を吐きたいときもあるのではなかろうか。今は私が妊娠中だから、私を優先してくれるけれど、いつかそんな弱い部分も見せてくれると嬉しいなと思う。

「あ、兄さんから電話だわ」

メトロを降りると兄からの着信が入った。

「どうしたの?」

電話の向こうで兄は言う。

『今、どこだ? 俺退屈なんだ』

どうやら、暇つぶしで電話をしてきた様子。それが円山議員の秘書の言葉かしら。まあ、今日は父も休日だろうけれど。
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