エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
「あまり強がらない方がいいわ。というか、そういう態度が凛さんに嫌われた理由でしょう」
「あのなあ、誰もが芽衣子と駿太郎みたいな優等生カップルじゃないんだよ。男と女は色々あるの。芽衣子は疎いから、わからないだろうけど」

お茶を濁すというか、論点をずらす兄に、むっとしている私の横で駿太郎さんが言い添える。

「俺と芽衣子だって、それなりにふたりで悩んだりぶつかったりして、今があるんだよ。ねえ、芽衣子」
「えっと、ええ。そうですね」
「鉄二は、俺たちをうらやんでないで、彼女に許してもらえるように会いに行ってきたらどうだい?」

駿太郎さんはにっこり笑う。
どうも、これは妹に対し圧力をかけてくる兄への、駿太郎さんなりの応戦らしい。彼にしてはささやかだけど意地悪な物言いだもの。
すると、兄が情けなく眉間にしわを寄せて、駿太郎さんの腕に飛びついた。

「そんなこと言うなよ、駿太郎~。つまらない休日を過ごしている義兄を構ってくれよ~」
「それなら、芽衣子に意地悪を言うもんじゃないよ」

やっぱり私を庇っての言葉だったみたいだ。さらにはアラサーの男子ふたりがじゃれている構図が面白くて思わず笑ってしまった。どうやら、大学時代より今の方がずっと仲が良さそう。

「駿太郎さん、レストランが混む前にランチに行きたいから、ぱぱっと選んじゃいましょ。兄さんは口出し禁止よ」
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