エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
「あとは、赤ちゃんが産まれて落ち着いたらハネムーンを考えてるんだ。その休暇は取りたいねってふたりで話してるよ」

駿太郎さんの言葉に、私も頷いた。

「赤ちゃん連れだから、あまり遠出はできないけれどね。本当は駿太郎さんのお母さんに会いに行きたいくらいなんだけど」
「ハワイは少し遠すぎるね」
「あ! 駿太郎のお母さんって美魔女なんだろ? 俺が大学時代見たあの人! 全然親子に見えなかったもんな。誤解するよ、あれは」

兄が思いだしたかのように言い、駿太郎さんが苦笑いした。なお、兄の誤解が解けたのはつい最近だ。

「あんな美人な母親、隠すなよ。大学時代に言ってくれたらよかったのに」
「息子としては恥ずかしいんだ。先月、母が帰国したときようやく芽衣子を紹介できてね。赤ちゃんが産まれたら会いにくると思う。そのとき、鉄二にも紹介するよ」
「お母さんにも抱っこしてもらいたいから、来てくださったら嬉しいです」

見つめ合ってニコニコしている私と駿太郎さんを眺めて、兄が深いため息をついた。

「なんだか、おまえらを見てると順風満帆で羨ましいかも」

そんなふうにしみじみと言う。だから、私たちにも色々あったんですって。でも、ひねくれた兄が素直に羨ましいと言うくらい、私と駿太郎さんは順調に夫婦になっていきているんだ。
それは胸を張ってしまうくらい嬉しいことだった。

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