エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる～お見合い夫婦の片恋蜜月～

九月も半分が過ぎた。私は予定通り産休に入り、赤ちゃんが産まれるまでの日々を楽しむことにした。

手間のかかる料理を作ってみたり、赤ちゃんの使うガーゼハンカチに刺繍をしてみたり。まだ名前が決まらないから、名づけ辞典を眺めるのも楽しみだ。

父は初孫で男の子ということもあり、異様に張りきって勝手に名付けをしようとしているけれど、それは全力で阻止するつもり。私と駿太郎さんの赤ちゃんだもの。それに駿太郎さんのご両親それぞれの意見も聞かなきゃ。
たぶん、父は兄の婚約が駄目になったから、余計に私たち夫妻の赤ちゃんに期待をしているのだろう。そのうち、赤ちゃんを将来は政治家に……とか言いだしそう。

駿太郎さんのお義母さんからは可愛いベビー服がすでに何着も届いている。
駿太郎さん曰く、お義父さんには内緒にしておいたほうがいいそうだ。絶縁状態のご両親を刺激したくないとのこと。苦労するのは駿太郎さんだろうと思うので、私は重々承知と頷いた。

どこの家もそれなりに大変なことはあるなあと苦笑いしつつ、私たちの赤ちゃんが家族にとって幸福を運んでくる存在になればいいとも思う。駿太郎さんとはそんな話をしている。

その日、私は夕食を作っていた。
以前、銀座のロシア料理店で食べたボルシチがどうしても食べたくなり、ビーツを始めとした食材を買い集めた。あとはレシピサイトを見ながら作るつもりである。