エリート官僚は授かり妻を過保護に愛でる~お見合い夫婦の片恋蜜月~
初めて作るから、ちゃんと美味しく出来上がるか心配だ。
駿太郎さんは口に合わなくても気にせず食べてくれるとは思うけれど、どうせなら毎日栄養満点で美味しいものを食べてほしい。赤ちゃんが産まれたら、しばらくはゆっくり料理も作れないだろうから。
でもそうしたら、駿太郎さんが料理を張りきっちゃいそうだな。レシピサイト通りきっちり計量して、見た目もこだわって調理しそう。
想像して、ひとりクスクスと笑ってしまう。

ダイニングテーブルに置いたスマホが振動をし始めたのはその時だ。駿太郎さんだろうか。
スマホの振動の仕方が着信のそれなので、手を拭きテーブルに歩み寄った。
スマホには父の秘書の野間さんの名前が表示されていた。
なんだろう。野間さんが私にかけてくることは稀だ。

「はい、野間さん、どうしましたか」
『芽衣子さん、落ち着いて聞いてください。円山先生と鉄二さんが事故に遭いました』

え、という言葉は音にならなかった。息を吸ったきり、止めてしまう。

『私が今日お休みをいただいていまして、鉄二さんが運転していたのですが。交差点で後続車に追突されたと聞いています。私はこれから病院に向かいます。芽衣子さん、奥様にご連絡をお願いできますか』
「わかりました! 連絡をして、私もすぐに向かいます」

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