婚約破棄をお願いしたら、年下御曹司様の溺愛から逃げられません!



「夏帆さん、こんばんは。今日も来てくれてありがとう……」

「いえ」


 いえ、とはなんだ……。いえ、じゃなくてもう少しあるでしょう。婚約破棄したいのにいい印象を受けさせてどうするんだ、私は。


「夏帆さんは優しいね、さぁ行こう。両親が待ってる」


 今行ったら、私の意見は無視されて確実に婚姻届にサインさせられる。


「……あ、あのっ!」

「なんだ、夏帆。モタモタするな……豊浜さんが待っていらっしゃるんだぞ」

「私は、彼との婚約を破棄させていただきます!」


 そう言った私を見て、口をパクパクさせる父に今にも泣きそうで目を潤ませる母……そして悲しそうな表情の婚約者がいた。




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