婚約破棄をお願いしたら、年下御曹司様の溺愛から逃げられません!
そう。あの人は可愛いのだ。それに表情豊かだし、まだまだ少年のようだけどたまに見せる横顔は男性の顔だった……その全てが可愛いのだ。
好きとかの感情はない。だって私は、年上の人が好きだから。
「へ〜?」
「な、何よ……っ」
「ふふっ、夏帆って可愛いもの好きだものね。この前も癒し動物動画見てたし」
「確かに癒し動画は好きだけど」
氷が少し溶けてしまったアイスミルクティーを一口飲む。
「ねえ、夏帆。あれ、圭吾くんじゃない?」
「え? こんなとこにいる訳――」
私がミルの指さす方向を見ると、制服姿の圭吾がいた。
「本当だ……こんなとこでどうしたんだろう」
圭吾は公園のベンチに座りこみ、なんだか苦しそうにしている。
「ミル、ちょっと私行ってくる……お金、置いておくね」
「うん。了解……気をつけてね」
好きではなくても、今は一応婚約者だし知ってる人が苦しそうにしているのに放っておくほど冷たい人じゃない。
私はカフェを出ると公園へと向かい、彼の座っているベンチに近づいた。