もう⋅⋅解放⋅⋅して⋅⋅⋅下さい
✬✬退院と真実
お義母さんが退院したのは、
入院から、ひと月弱経った日だった。
退院の日は、旭が行くらしく
私は、仕事を理由にして
義母に話した。
義母は、
「毎日、本当にありがとう。」
と、言ってくれたので
「帰っても無理しないで下さい。
何かあったら連絡して下さいね。」
と、伝えた。
里子は、自分が紬に酷い事を
言ったことを気にしていたが
口に出して謝る事ができなかった。
それに、里子は紬の事を
良い嫁だと思っている。
今回の入院にも
紬は、直ぐに駆けつけてくれた。
嫌な顔一つせずに
仕事の合間に
毎日、洗濯をしてくれたり
必要な物を買ってくれたり
おかずを持ってきてくれたり
だが⋅⋅⋅⋅⋅⋅
息子の旭が
病室にきた時
正直、誰かわからなかった。
痩せていて頬はこけ
目の下に隈もあり
いつもキチンとした身なりだが
ヨレヨレのワイシャツに
上着を羽織隠してる?
スラックスもよれている。
退院の日に迎えに来てくれて
支払いをしてくれた。
その分は、返すつもりだが。
荷物をタクシーに積んでくれて
ゆっくり歩く私を待っていた。
家に着くと
紬さんが、レンタルの電動ベッドを
日当たりの良いとこに
準備してくれていた。
紬さんは、ベッドを購入しては?
と、言ってくれたが
ずっと布団で過ごしてきたので
あわないと行けないからと
レンタルにしてもらった。
旭は、知らなかったのか
驚いた顔をしていたから
ベッドに上がり
座る体制に調整をしていると
旭が、お茶をいれてくれた。
「旭、今日はありがとう。
そこに座りなさい。」
と、言うと
旭は、ベッドの近くに座って
自分のお茶を飲み始めた。
「あなた、
何か紬さんにしたんじゃないの?」
と、言うと
はぁっとした顔で私を見るから
「紬さんの口からあなたの名前が
一度も、でないし。
あなたのその姿。
紬さんと結婚してから
そんなみすぼらしい、あなたを
見たことがないから。」
と、言うと
旭は、俯いて
「⋅⋅⋅⋅⋅母さんが、母さんがいけないんだ。」
と、ボソボソ
「なに?何がいけないの?」
「母さんが、俺達夫婦に子供が
出来ないことを、グジグジいうから。」
「えっ、それで紬さんが、怒ったの?」
「紬は、ショックを受けては
いたけど、怒ったりしない。
紬は、そんな女じゃない。」
「そうね。紬さんは、良い嫁よ。
それなら、なんなの?
はっきり言いなさい。」
と、言うと
旭は、ぽつり、ポツリと話し始めた。
その内容に情けないやら
悲しいやら、腹が立つやら
紬さんに申し訳ない気持ちで
いっぱいだった。
でも⋅⋅⋅⋅⋅
私が⋅⋅⋅⋅⋅⋅⋅二人を⋅⋅⋅⋅追い詰めた⋅⋅⋅⋅⋅⋅
私が⋅⋅⋅⋅紬さん⋅⋅⋅⋅⋅を⋅⋅⋅⋅⋅
旭⋅⋅⋅⋅⋅を⋅⋅⋅⋅⋅⋅
「だからと言って
なぜ?どうして?
紬さんを裏切ったの?
嘘までついて。」
「どうして⋅⋅⋅⋅⋅
俺も、何度も考えた
本当に、バカだ、俺は。
あの時、母さんボケたかな?
と、言ったら
紬が、お義母さんは、
嘘をつく人じゃない
子供の事で色々言われて
つらいけど
お義母さん自体は好きだと
言ってた。
はぁっ、俺は、捨てられるのかな」
と、言う旭。
「バカっ、あんな良い嫁を。
何度も、何度も謝りなさい。
謝って許してもらえる事では
決してないけど。
私も一緒に謝るから。」
と、涙を流しながら
話す母に
俺は、茜の腹の子の事や
家賃の話しをする事は出来なかった。